2010、F1シーズンの折り返し (2)

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前回の記事が、長くなりすぎてしまったので、途中で一旦切ってしまったが、引き続きと言う事で、パート2。


緊張状態が続くレッドブル。今後のチームマネージメントが鍵

レッドブルは、今シーズンの中で最も速い車を持っていることは明らかだ。特に予選でのパフォーマンスはずば抜けている。レースに於いても、うまくPPのアドバンテージを活かして、トップ走行をする場合は、大体のケースは他チームを置き去りにするハイペースを見せており、一貫したパフォーマンスを発揮している。
しかし、ドライバーズ、コンストラクターズ双方のチャンピオンシップにおいて、リードを保っているのは彼等ではなく、マクラーレンだ。
当初、レッドブルは速いが信頼性に劣るとの風評で、事実、ヴェッテルはトップを快走しながら、ブレーキトラブルなどのマシントラブルの連続でそのポジションを明け渡している。ニューエイの作るマシンは、いつも、「速いが壊れやすい」と言う評価を得るが、レッドブルについてもご多分に漏れずと言う感じだ。
それに追い打ちを掛けるように、最近は、ヴェッテルとウェバーのチームメイト同士の関係に緊張が高まっており、チーム内のこうした緊張により、その高いポテンシャルを活かしきれずに自滅する危険を孕んでいる。

大きくチームメイト同士の軋轢が注目され始めたのは、トルコGPにおける、2台の接触事故。
ウェバーーヴェッテルの1-2体制を築いたのにも関わらず、同士討ちにより、マクラーレンに1-2を譲ってしまった。
この1件については、多くのメディアがヴェッテルの方に非があると言う見解で、実際、ウェバーはヴェッテルのオーバーテイクに対し何の抵抗もせず、ラインも変えていないにも関わらず、抜き終わっていないのにヴェッテルが突然ラインを変えたように見え、尤もな見解だと思われたが、チーム側は真っ先にウェバーを批判した。
またウェバーはそのチームの態度に明らかに不満を抱いている感じだった。
これによりメディアは一斉にヴェッテル優遇論を展開。チームがドライバーを公平に扱っていない事に対し批判を行った。最後にはレッドブルチームも、レースアクシデントだったと結論付け、どちらの責任でもないと言う立場を主張し、またチーム内、ヴェッテルとウェバーの緊張関係を緩和する為のミーティングが行われ、この問題は解決したと必死にアピールを図った。

しかし、続いて、イギリスGPにて更に緊張状態が勃発。新しくアップデートされたフロントウィングを巡るいざこざ。ヴェッテルとウェバー双方にこの新しいフロントウィングは与えられたが、ヴェッテルがフリー走行中にフロントウィングを損傷してしまい、予選時に、ウェバーのマシンに取り付けられていた新フロントウィングを、わざわざ外し、ヴェッテルのマシンに取り付けると言う判断をチームが下した。予選結果はヴェッテルがPP。ウェバーは2位で終え、予選後、ウェバーはあからさまに不満をぶちまけた。
決勝では、ウェバーが不満をうさ晴らす素晴らしいスタートを切り、トップを快走。そのままチェッカーで優勝を飾る。そしてウィニングランのチームラジオで、「ナンバー2にしては、悪くないレースだった」と皮肉たっぷりのコメントを発した。おまけに、こんな事になるのなら来年の契約は見直したいとまで発言した。

この後、チームはウェバーに対して、フロントウィングをヴェッテルに与えた理由を説明。フリープラクティスでのパフォーマンス、判断時点でのチャンピオンシップでの順位から優先度を考えた事などが事由で、決してヴェッテルを優遇している訳ではないと言う事らしい。
一旦ウェバーは納得したようだが、またチーム及びヴェッテルと和解したとは発言しているが、チームが説明した理屈だと、今は自分がポイントでは上の為、次に優遇されるのは自分だと信じている。チームとしてはこのような二者択一となる事態を可能な限り避ける動きに出るのであろうが。

2002年のフェラーリにおける露骨なチームオーダー以来、FIAは明確にチームオーダーを禁じてきた。この事により、チームも原則両ドライバーに対し、公平である立場を取らざるを得ないし(尤もチャンピオンシップで明らかに差がある場合はそれを理由に優先度を説明する事は出来るだろうが)、メディアも贔屓があれば、それを騒ぎ立てる構造になっている。
昨年は、ウェバーも活躍したが、ヴェッテルの方が一歩上の印象があり、それなりに軋轢なく終わったが、今年はウェバーが絶好調であり、イギリスGPでの勝利で、誰よりもいち早く3勝目をマーク。十分にチャンピオンシップ制覇の可能性もあり、チーム内のライバル意識は相当に強くなっている。2度の和解劇の後も、仲違いはないが、ライバルとして非常に意識し相手に勝ちたがっている事は、ヴェッテル、ウェバー双方のコメントからも読み取れる。
今年は特にマシンは最高な訳だし、直接のライバルはチームメイトと言う意識は強いだろう。
レッドブルとしては、若く、最年少チャンピオンに輝く可能性もある、レッドブル育成プログラム出身であるヴェッテルに活躍してもらった方が、マーケティング的にも明らかにメリットがあるだろうし、そうなって欲しいと言う所が本望だと思うが、あからさまにそう出来ないジレンマを感じる。いっそそうだと言い切った方が、スムースに事が運ぶ気もするが。

チームオーダーの禁止が明示事項であり、またウェバーのパフォーマンスもヴェッテルに引けを取っていない以上、今後もチームはメディア対策含め、慎重に両ドライバーを扱う必要があり、難しいマネージメントを迫られそうだ。特にレッドブルはチーム自体若い訳で、最高の車を持っているレッドブルに対し、マクラーレンは、そうしたチーム内の不協和音につけ込みたい所だろう。今後、ヴェッテルとウェバーの緊張状態は、はっきりとしたポイント差が出ない限り、更に強まるだろう。どのようにチームがマネージメントしていくかそこが鍵だ。結局、最高の車を持っていても、チャンピオンシップを台無しにする可能性を大いに孕んでいる。事実、現時点ではマクラーレンに先行を許してしまっている訳だし。


ツイテいる人、ツイテいない人

今シーズンのここまでの時点で、最もツイテいるのはバトンだろう。シーズン序盤の運にも助けられた2回の勝利も、もちろんそうだが、その後の展開も、基本的にはツイテいる。
クルーのミスでオーバーヒートを喫しリタイヤしたモナコGPの例もあるが、ハミルトンが調子を上げ始めてからは、すっかり勝てないでいるバトンだが、ダメージは最小限に留まっている。ハミルトンに勝てなくても、すぐ後ろの順位でフィニッシュする事の多い幸運。
カナダでも予選では離されたが、終わってみればハミルトンに続く2位をゲット。次のバレンシアでは、例のアロンソが激怒しまくったセーフティカーのお陰で、うまくピットインを済ませ、結果的にハミルトンの後ろ3位でフィニッシュ。また先日のイギリスGPでも14位と言う最悪の予選結果から、これまたアロンソのペナルティなどもあり、またタイヤ戦略も当たり、4位をゲットと、全般的に運がいいと言えるだろう。

次にツイテいると感じるのはハミルトンだろうか。序盤は空回りな感じもあったが、スペインの不運(アグレッシブなドライブのせいかも知れないが)な2位走行中のタイヤバースト以降は、比較的、従来の速さとパフォーマンスを示してきている。
トルコではレッドブル同士討ちによる幸運なシーズン初勝利を飾り、バレンシアでは、セーフティカーがコースに入ったタイミングで、セーフティーカーをオーバーテイクしてしまい、ドライブスルーペナルティを喰らったが、裁定に時間がかかった為、本人のレース結果には何の影響もなかったと言う幸運ぶり。

このマクラーレンの両ドライバーがツイテいるお陰で、今のチャンピオンシップリードがある面もあるだろう。

反対に、最もツイテいないのは、フェラーリのアロンソだろうか。
マッサもツイテいない感じで、フェラーリは全般的にツイテいないが、何だかマッサはすっかり影が薄くなってしまった。元々、オーラーが強いタイプではないが。
そして、アロンソ。鳴り物入りでフェラーリに移籍し、開幕戦をレッドブルの不運で見事に勝利で飾った後は、全くいいとこなしだ。
モナコでは好調だったが、自らのミスでクラッシュを喫し、予選をフイにし、レースもフイにした。まぁ自業自得なのだが。
カナダでは優勝のチャンスもあったが、バックマーカに引っ掛かりマクラーレン勢にオーバーテイクされ、そして、ヨーロッパGPのバレンシアでは、セーフティーカーの出るタイミングが悪く、3位走行中だったにも関わらず、おまけに車の調子も良かったのに、すっかり後方に追いやられてしまった。セーフティーカーを追い抜くと言うペナルティ行為を喫したハミルトンは2位フィニッシュし、ちゃんとルールを守ったアロンソは8位に終わると言う結果になり、アロンソもフェラーリも激怒してたけど。

更に不運ぶりは次のイギリスGPでも発揮され、クピサをシケインショートカットによりオーバーテイクしてしまったアロンソだが、ペナルティの出るタイミングが最悪で、セーフティーカー中にドライブスルーペナルティを受ける形になってしまい、致命的に順位を落としてしまった。
フェラーリの車自体のパフォーマンスはブロウンディフューザー投入後が上向きでレース時のラップタイムからもそれが伺えるのだが、どうもツキ周りが良くない。
最近はレッドブルのチーム内不協和音が大きな話題になっている為、フェラーリのチーム内情はよく分からないが、微妙に不協和音もあるのかも知れないが、単純にツイテいない気がする。様々な要素がうまく回り始めれば、またパフォーマンスを戻してくるだろうが。

また、ヴェッテルもツイテいないと言えばそうなのだが、個人的には自業自得な気もしている。ブレーキ等、彼だけよく壊れるのも、ドライビングが影響していると思われるし、トルコGPの1件や、イギリスGPのスタートでウェバーに抜かれ、ハミルトンと軽く接触しタイヤパンクに至ったのも、ウェバーが完全に前に出てるのに不必要にウェバーに被せていった自ら招いたアクシデントと言う見方が強い。まだまだ若いと言う事だろうか。


果たして、M.シューマッハは?

そして、M.シューマッハだが。
スペインで復調の兆し(と言っても、全体的なパフォーマンスが上がった訳ではなく、チームメイトのロズベルグに勝ったと言う意味合いしかないが)を見せたが、その後は、相変わらず凡庸なレースが続いている。
彼は、レースをしている事自体を楽しんでいるだけなのかも知れない。41歳の年齢で3年もブランクがあればパフォーマンスが落ちるのも何ら不思議ではないが、モチベーションや覇気自体が感じられない。単純にレースでのスリルや感覚を味わう為に復帰し、それがあれば満足なんだろうか。そんな感じに受け取れる。
最近は、J.スチュワートを始め、今シーズンで引退するだろうと多くの人が予測するに至っているが、確かにチャンピオンを目指していこうと言う姿勢に見えないのは確かだ。
彼は非常に計算高いドライバーなので、何かあると、かすかながらも期待はあるのだが。



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